社長のつぶやき
Vol4.釘と金槌
「釘と金槌」であって、「金槌と釘」ではない。「タバコと灰皿」であって、「灰皿とタバコ」ではない。
なぜか? 大切なのは釘であって、金槌は釘を打つための道具にすぎない。金槌がなくても、石で釘を打つことは出来るが、釘がなければ金槌だけあっても釘は打てない。灰皿がなくてもタバコは吸えるが、灰皿だけあっても仕方がない。灰皿を小物入れの皿に使ったら、それはもはや灰皿ではない。主役は釘であり、タバコである。金槌や灰皿はあくまで脇役なのである。

何が言いたいのかというと、今の世の中、主役と脇役の区別が乱れてしまっていること、主役が虐げられ、脇役が幅をきかせていることへの不満なのである。「なんで主人が風呂掃除をしなくてはならんのだ!」と、この場を借りて家庭の不満をぶつけようと言うのではない。「俺は主人だ」といっても「私は主婦よ」と言われておしまいである・・・。

そんなことはどうでもいいのだけれど、問題は木造住宅なのである。木造住宅と言うからには、「木で造られた住宅」であり、木が主役でなくてはいけない。そうでなくては、木造で良い家が出来るはずがない。

しかし、現実には昨今の家は主役である木は脇役の設備機器などに主役の座を奪われ、壁の中に隠れて小さくなっている。姿が見えないから、余計に存在感が無くなり、脇役どころかどうでもいい存在に成り下がってしまった。

木でさえあれば良い、構造材に木さえ使えば木造住宅だ、という考え方の末路が今日の木材離れである。木の本当の価値、使い方を知らず、安ければ良いという考えが、一見、木材に見える新建材を生み、とどのつまりが「どうせ壁の中で見えないのだから」とスチールハウスにまで行き着く。

木を主役の座から引きずり下ろした犯人は消費者ではない。自ら木の本来の価値から目を背け、木を選ぶ大切さを放棄した材木屋である。FAXで送られてきた手板1枚で右から左へ商売するイージーさに首までドップリと浸かってしまった問屋であり、大工の言うがままに資材を集め、配達するのが仕事になってしまった小売屋である。

自嘲の意味も含め手厳しい言い方をするが、恐らく木材業者がこのような姿勢でいる限り、いくら木材需要の拡大を叫んだところで、大工や工務店の耳にも、ましてや消費者の耳にも届かないに違いない。木材PRの必要性を心底感じ、動き回れば動き回るほど、空しくなってしまう。

消費者や設計者と話をすると、彼らがあまりにも木材のことを知らないのに驚かされる。誰も教えてくれなかったのだから、知らなくても当然である。

自然回帰や健康ブームのおかげで、せっかく木を使おうと考える施主や設計士が現れても、大工が「木を使うと高くなりますよ」と言って新建材を薦める。それを知っても材木屋は「何で木を使わないんだ!」と怒らない。ニコニコと笑って新建材を納める。

しゃしゃり出ていって施主に「材木が高いんじゃない。大工の手間が高いんだ!」などと言ったら、大工は二度と買ってくれなくなるから仕方ないが、一体いつになったら木材需要の拡大が出来るのだろうか・・・。

今まで木材業界は裏方に回り、「大工・工務店支援」などと言って間接的に動いてきた。私も以前は大工や工務店を支援する事で木材需要の拡大をと考えていたが、最近はその方法では無理だと感じている。

本気で木を主役の座に返り咲かせようとするならば、大工や工務店の尻を押すのではなく、材木屋が前に回って直接施主や設計士と話をし、材料を決め、大工や工務店を引っ張ることを考えなくてはいけない。

当社建築部門の「桶市ハウジング」はそのような背景から設立に至ったのです。

大工・工務店には脇役になってもらい、材木屋が主役にならない限り、木も永遠に主役の座を回復することは出来ない。木材業者は、金の金槌より、ステンレスの釘にならなくてはいけないのである。